私の名は、魔将ソルコム。魔王ヴァイガ様に仕える、誇り高き魔将だ。一口に魔将と言っても色々だ。

毎回騙される愚か者にアーアーパンダ、あるいはローブを着たイケメン辺りの残念な連中が有名か。


私はスラッとした体型に甘いマスク、そして星の塔侵攻作戦を任される実力を兼ね備えた正統派だ。

そして目の前にいるのは人に組した魔族の裏切り者。いかな理由をあろうと制裁を加えねばならない。


2018040601

魔将という肩書といい見た目といい、強キャラ感のあるボスだったが、予想外に弱かった。

軽くボコってやったら周りを顧みず涙目で遁走していった。仮にも魔将ともあろうものが。


まさか尻尾を巻いて逃げ出すとは思わず、呆気にとられてうっかり逃走を許してしまった。

あーあ。ま、いいか。出番だと言われただけで、別に八つ裂きにしろと言われたわけではないし。



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何もしてないくせに文句だけは一人前。隙を突くとか、君が自分でやればよかったんじゃない?

それでも人質の命が握られている以上、思っても口に出さないのが大人の処世術というもの。


しかし何度聞いても背筋が凍る恐ろしい語彙選択だ。ストーカーの本領発揮と言ったところか。

追い詰められたソルコムが行き着く場所は唯一つ。この先のランコ水域22区しかない。



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22区へ進むと、先程の敗走はどこへやら。吹っ切れた様子のソルコムが泰然と構えていた。

かなわないと悟って時間稼ぎか。まあいい。聞けば星の塔強奪作戦に失敗した敗軍の将だ。


生かしておいても禍根になるし、どのみち魔界に帰っても失敗には死を持って償うことになる。

冥土の土産に多少の話はしてやってもいいだろう。救世主様の優しさに咽び泣けばいいよ。



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聞きたいと言うから話をしてやったら、どうも注視者から聞いた話と齟齬が生じている。

魔力を吸い取って回った水晶は補給タンクなどではなく、地域情報のアーカイブだったらしい。


よくわからないが、ソルコムを討ち取るついでに手柄を横取りしてしまおうという魂胆なのか。

このまま注視者の思い通りになるのは少々面白くない。だがしかし、彼には人質が・・・。



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ジェミナ様、こういう時はどうすればよいのでしょうか。祈りを捧げると力が沸いてきた。

なるほど、これで全てを破壊せよと仰るのですね。分かりました。私も不肖、女神の代行者です。


ここはソルコムの口車に乗ったふりをして注視者が集めている情報源の水晶は全て破壊しよう。

その上でソルコムもぶち殺してミッションコンプリート。完璧だ。・・・人質? 知らんな。



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注視者とソルコム、どちらも信用には値しないが、どちらの味方をしても損はない。

ソルコムのささやかな復讐に手を貸してやったという口実のもとに水晶を残らず破壊する。


ちょっと捨て鉢だったソルコム君も少しだけ元気になったようだ。そうだそれでいい。

生きることを諦めたマグロを切り刻んでも楽しくないからな。精々いい声で鳴いてくれ。



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そこにちょうどよく現れる注視者さん。どうやら破壊しつくされた水晶の事を嗅ぎつけたようだ。

そして即座にその犯人がソルコムであることを推察したらしい。中々頭の切れるやつだ。


まぁやったのは僕ですけどね。注視者からすれば動機がない僕を疑う理由はない。

せいぜい魔族同士で醜い言い争いでもして楽しませてくれればいいさ。フハハ。



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と高みの見物を決め込むつもりが、注視者のカミナリが落ちたのはコッチだった。

バレバレだったらしい。あーい、ちゅいまちぇーん。あっしがわるうござんしたー。


だが責任転嫁をするのは忘れない。やれっていったのはソルコムのヤツなんですよ旦那。

僕は悪くない、ただ、はめられたんだ。お願い信じて。女神の名に誓ってもいいよ。



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馬鹿野郎、ソルコム。協力関係を暴露するとかお互いの立場が悪くなるだけだろうが。

それに注視者を殺すのにソルコムの助力など要らん。それが出来たら最初に殺ってるって話だよ。


不味いな。不興を買って人質を殺されては今までの苦労が水の泡だ。そしたらお前のせいな。

ハイ責任転嫁完了。これで人質が死んでも罪悪感がなくなった。こういうのは気の持ちようだ。



2018040610

一瞬、ソルコムの誘いに乗って殺っちゃおうかとも考えたが、それは早計というものだ。

正直言えば、もう人質が生きようと死のうとどっちでもいいんだが。割と本気で。


注視者側につくか、ソルコム側につくか。となれば決まっている。

メリットとデメリットを考えれば、そもそも選択の余地はない。



2018040611

あくまで注視者とは交換条件なのに対し、ソルコムはただ己の願望を叶えたいだけの自己中だ。

助力のメリットを提示できない点でそもそも交渉のテーブルにすら着けていない。


ソルコムには悪いが、魔族公認で魔将の解体ショーなんて滅多にない体験だ。

今度こそ死んで貰おう。僅かに芽生えた希望を黒く塗り潰す快感は何者にも代えがたい・・・!



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星の塔攻略という大任を課された結果が同胞に命を狙われ、最後は見知らぬ土地で土に還る。

思えば可哀想なやつだが、己が保身のために啓示者をただでこき使おうという根性が災いしたな。


魔族サイドとしてはこれでバランスに変動があるだろうが、女神サイドとしては何も問題はない。

むしろ有力な魔将を1匹叩いて戦力ダウンさせたというメリットしかない。内輪もめ万々歳だ。



20180406013

ソルコムを討ち果たしたお陰か、約束通り副官を開放してくれる注視者。意外と紳士。

魔族でも捕虜に非道な行いはNGなのだろう。必滅至上主義のクポルたちも見習うべきだと思う。


残念ながら情報水晶を破壊したのはさして痛手でも無かったようだ。まぁお陰で人質は助かったし。

配下を潰された魔王ヴァイガには恨まれるかもしれないが、そこはそれ、苦情は注視者へどうぞ。