魔王は、魔族の王だけあってとても強い。それこそ女神でも1on1で戦うのは避けたいくらいだ。

啓示者が軽くあしらえるのは魔将クラスが限界。故にリディア・シャッフェンの偉業が際立つのだが。


ターネットで対峙した魔王ジェスティは、祭壇と聖具の力を借りて辛うじて追い返したに過ぎない。

聖具も祭壇もなければ、むしろ足手まといしか居ないこの状況で魔王と遭遇するのは非常に危険だ。


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拘束されたメデイナが魔界に転送される前に、転送補助魔法陣を迅速に破壊しなくてはいけない。

物理的に壊れない時はおなじみの過負荷で壊す方法だ。壊れなかったらどうなるかは一切考えない。


今の所、毎回成功してるから良いが。きっと、セーフティという概念そのものが存在しないんだな。

お互い相手をただの燃料位にしか思ってないし。いくら動乱の時代でも、もう少し命を尊ぼうか。


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補助魔法陣を破壊すると、メデイナの語彙力も破壊されてしまった。緩くなったのはお前の頭だよ。

魔王相手に丁々発止とやりあっていたメデイナも、クポルに知能レベルを合わせるとこうなるのか?


まぁいい。これで転送装置の拘束から脱出できる。後は逃亡するだけだが・・・一足遅かった。

この場を離れるより早く、魔王が戻ってきてしまった。最悪ではないが、その次くらいには悪い。


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メデイナのことだ、勝つ算段がなければ再びクポルと啓示者だけを魔王から逃がそうとするだろう。

だがそれでは中部で接触した時の二の舞だ。しかしただ逃げるだけでは女神オーラを嗅ぎつけられる。


かなり厳しいが、ここで多少なりとも手傷を追わせて、追撃できないようにしなくてはならない。

それを魔王相手に、聖具もない状態で、万全でない女神と役立たずの2匹を連れて逃走。無理ゲー。


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しかも小枝で騙されたことで激高し、誓約によって禁じられた女神への直接攻撃を行うカルタス。

やはり魔王は誓約の内容を知らないらしい。躊躇なく攻撃するとは想定外だった為、反応が遅れた。


魔王の怒りは、とっさに主君を守ろうと身を挺したクポルたちに直撃した。こいつらはいつもそうだ。

相手は魔王だぞ。下手したら消滅するぞ。そんな事さえ考えなしに飛び出すのだから始末に負えない。


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二人で受けたのが幸いしたか、致命傷には至らなかったようだ。だが、もう自力で立つ事も出来ない。

手負いの二人を抱えて、万全な魔王から逃げおおせる? いや、もう一撃でも食らったら終わりだ。


メデイナには辛い決断を迫ることになるが、二人が命がけで作った時間を無駄には出来ない。

主君を守ることがクポルの務め。間違っても、足手まといになるような事があってはいけない。


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二人を置いていく事はできないと渋るメデイナだったが、二人の懸命な説得により最終的には折れた。

置いていけば魔王に何をされるか。これが最後の別れとなるかも知れないが、別れを惜しむ暇はない。


魔王が次の攻撃を仕掛ける前に素早く転移。一人でならまだしも、啓示者が捕まったら終わりだ。

そして今は例の種もある。例えクポルたちを見捨てる事になろうとも、絶対に奪われてはいけない。


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今の能力では、同じ森の中を移動するのが精一杯。ひとまず距離は取れたが、逃げ切れるかどうか。

クポル達を助けに行きたいのは山々だが、対抗手段がない今、魔王の元へ戻った所で救助は難しい。


だが、カルタスは女神の知識を求めている。メデイナさえ居ればイローナとユリアに用はないはず。

従ってメデイナだけが留まり、種は啓示者が持ち出す。最悪の状況を避けるにはそれしか無い。


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正直、クポル達が探しに来たのは誤算だった。だからといって、それを嬉しく思わぬ訳もない。

ちょっとおバカで、ドジで、頼りないけれど、いつも一生懸命で、健気な優しい私のクポル達。


我が身に起きた唯一つの不幸ですら、これほど身を切られるような苦痛だとは思いもよらなかった。

予言の力で数え切れない不幸を見てきたライマは、どれほどの悲しみを背負っていたのだろうか。